DeNAとAI。相川のアイはAIなのか、愛なのか。

2026年は根性野球かAIか。千葉ロッテサブロー監督が掲げた昭和のキャンプの成果。そしてDeNAベイスターズのAIチームのトップが語るベイスターズのAI運用と、昨年大きな成果を挙げた石田裕太郎・竹田祐・宮城滝太のAI実用例。そして南場オーナーが語るAIと野球とは。
村瀬秀信 2026.03.09
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令和の野球vs昭和の野球

さて、2026年シーズンも間もなく開幕である。
個人的な興味の対象は「令和の野球」vs「昭和の野球」のゆくえ。その局面が大きく動く年になるのではないか、と。

そんな動機から、今年のキャンプ取材で一番長く滞在したのが都城の千葉ロッテだった。そう、今年から新監督に就任したサブロー監督がぶち上げた”昭和のキャンプ”という甘美な響きに「泥にまみれて滑り込む」のマルハ軍歌で育った昭和野球の魂が、吸い寄せられたのである。

実際に球場では、選手たちが連ティーでガチガチに振りまくり、ヘトヘトになるまでやり切る昭和野球のパラダイス。それでも選手たちはなぜか楽しそうで、声もしっかり出ていて実に活気に溢れていた。そしてそれを慈しむように眺める、野球解説者の方たちの姿である。

都城千葉ロッテマリーンズ秋季キャンプ。松井稼頭央氏が臨時コーチで来ていました。

都城千葉ロッテマリーンズ秋季キャンプ。松井稼頭央氏が臨時コーチで来ていました。

この「昭和のキャンプ」宣言への、周囲の反響は凄まじかったという。
「よくぞ言ってくれた!」という賛辞が野球関係者から数多寄せられ、メディアからの取材も殺到。賞賛の声は他球団の監督コーチからも届いたというのだから、いかにこの時代、やりたいことができずに"溜まっている"野球人が多いかが伺えるというもの。

かく言う筆者も、サブロー監督へのインタビュー第一声で「昭和のキャンプ、最高です。痛快でした!」とやってしまうと、サブロー監督は「お前もか」というような苦笑いを浮かべつつ、こんなことを言うのだった。

「昭和昭和という言葉だけが独り歩きしてくれたのはよかったけど、本当に大事なことは"昭和と令和の融合"ですよ」。

やっぱり、そうなのである。マリーンズのキャンプは練習自体は厳しいものの、休みは3勤1休という異例の短さ。ウェイトは朝一番の身体がフレッシュな状態で行い、バイオメカニクスに適った緻密な練習プランを入れたり、戦略面ではアナリストやデータを重視していたりと、先進的な令和の取り組みをかなり取り入れているのだ。

その日の夜、無邪気に「痛快でした!」とやってしまった自分を10回ぐらい殺しながら改めて実感した。現在の野球界において、データを活用しないチーム運用はありえない。その逆もまた然りで、今は「昭和」と「令和」の塩梅をどう取るか、12球団ともに試行錯誤している最中なのだと。

AIの劇的な進化による実感を伴った恐怖心

ではもう一方の「令和の野球」の方はどうなのか。データを駆使した令和野球のトップグループを快走しているといわれる横浜DeNAベイスターズ。あなたはどうなのか。

ちょうど1年前の2月、親会社のDeNAはこのAI時代に先駆け「AIオールイン」を宣言している。オールイン。ポーカー用語で”持ち金フルベット”。AI時代の到来にDeNAは社運を懸けて挑んでいくと宣言をした。

当然、ベイスターズの運営にもこのAIは大きく関わってくる。昨シーズン中にもこの「AI」という言葉はたびたび聞こえてきてはいた。特に投手育成の面では、プロトタイプの「投手AI」を本格運用し、大きな成果を出したという。

そんな折に、ベイスターズには相川亮二が新監督に就任した。
そう来たか! しかしこれは期待できる。チーム愛があり、厳しさも、芯の強さも、人望も持っている。それなのに、何度打ち消しても頭に浮かんできてしまうのは「AI川亮二」という文字だった。昨今のAIの進歩は凄まじい。半年前に「まだ3年は逆転されないだろう」と思っていた文章生成AIにしても、現時点ですでに逆転されてしまった感すらある。

すでにメジャーリーグでは作戦面にAIが利用されているとも聞く。日本球界にもAI化の大きな流れが来るのは時間の問題だろう。そうなった時に野球はどうなってしまうのか。今は限られた領域だったとしても、いずれAIに試合の主導権を握られてしまい、采配機能を乗っ取られてしまったAI川亮二8.1が「コタエガデマシタ。ピッチャーデニー」なんて宣うディストピアが広がってしまうのではないか!

恐怖心。そう、これは恐怖心なのである。AIがあらゆるジャンルで想像を追い越す進歩をしていることによる実感を伴った恐怖。いずれ書く仕事に、人間が必要なくなってしまう恐怖。やがて、俺の愛したあのとんでもなく面白い野球をやってのけるベイスターズが、野球本来の魅力である気合や執念、チームを鼓舞するキャプテンシーや、人の心を動かす数値に現れない人間的な部分を、数値のみでしか評価しないAIに乗っ取られてしまう恐怖。

そんな恐怖心に駆られ、先週の金曜日。渋谷ヒカリエで開催された「DeNA×AI Day2026Proof.」という親会社DeNA主催のAI技術発表イベントに行ってきた。


この先は読者限定となります。DeNAベイスターズのAIチームのトップが語るベイスターズのAI運用と、昨年大きな成果を挙げた石田裕太郎・一軍未登板ながら後半に救世主となった竹田祐・ブレイクした宮城滝太のAI実用例。そして南場オーナーに「AIとベイスターズの野球」について質問をぶつけてみました。無料で登録できますので、以下からメールアドレスの登録をお願いします。(残り4388字)

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