「諦めない野球」のゆくえ。CSファイナル第四戦8-5
「ひとつでも負けたらそこから阪神が勝ってしまいそうな怖さがあって、絶対に今日決めたかったんです。どんなに劣勢になっても諦めませんでしたよ。少しでも選手が奮い立ってくれるなら。そう思って……タオルを掲げていました」
初回から最後の瞬間までやりきった。そんな充実感に満ちた声で振り返るのは、中継画面の左上に出ずっぱりだった矢部さん(仮名)だ。彼が虎の巣のようなタイガースファンに囲まれたネット裏で、たったひとり掲げ続けた「絶対勝つぞ」のメッセージに、諦めそうになる心を奮い立たせた人も多いのではないか。
もはや勝利は風前の灯火だった。最終回ツーアウト。あと一球からの逆転劇。これまでの3試合とは内容も、味わいも、気の狂い方も違う。それはたまにわけのわからない逆転劇を見せつけては我々を熱狂させてきた、ベイスターズという不可解な昔馴染みの顔だった。
このCSファイナル第4戦。勝てば日本シリーズというこの一戦で、ペナントを優勝したタイガースは完全に息を吹き返していた。
森下と佐藤輝明がスタメンに戻った1番から5番までの名は、関西の小学生が九九より先に言えてしまいそうな、お馴染みのラインナップ。その森下が2ホーマー含む3安打。サトテル2安打に大山が4安打というクリーンナップ猛虎襲来エンドレスは、ペナントレースでも苦い記憶のある光景だ。つい昨日まで3試合連続完封勝ちをやってのけるチームがいたことなんて、中盤にはすっかり忘れていた。