98番出口
それは奇跡のようなシーズンなのである。
開幕から6月まで、71試合27勝42敗2分。最大借金は15、得失点は-41。そこからの天地がひっくり返ったような大攻勢は、シーズンのちょうど半分となる7月2日から閉幕まで、72試合44勝27敗1分。貯金はなんと17。得失点は+84と3倍増である。
前半と後半では、まったく別のチーム。
こんなシーズンは……さすがに記憶にない。
「最後の巨人阪神でも終盤に逆転勝ちした! CS勝てるぞ!」
「今年の勝ち星は24年と同じ!しかもソフトバンクも同じだ!下克上じゃないか!」
未だCS慣れしていない哀れな身。目の前で起きている奇跡と、これからはじまるポストシーズンばかりに気を取られ、私は重大な事実に気付いていなかった。
ふと、目の前に見えている視界を再確認して、背筋が凍る思いがした。
「また……また、同じ景色じゃないか」
今年も終わってみれば71勝69敗の圧倒的3位。それは上に届くわけでもなく、下に追いつかれるでもない。調子に乗ればどこまでも行き、やる気がでなければどこまでも落ちる。強いのか弱いのか、よくわからない3位。
2016年 69–71–3
2017年 73–65–5
2019年 71–69–3
2022年 73–68–2
2023年 74–66–3
2024年 71–69–3
2025年 71–66–6
2026年 71–69–3
CSに初出場した2016年から11年間の成績を並べてみて私は戦慄した。
2019年、2024年、そして2026年。71勝69敗3分。
なぜだ。勝ちも、負けも、引き分けまで寸分違わぬ。 下克上の吉兆だと浮かれていた「24年と同じ」は、吉兆でもなんでもない。阪神とのCSで7ー1の余裕ぶっこいてバリオス出して逆転負けした19年とも同じだったのだ。シウマイの看板も、照明塔のチラつきも、スターマンが転がるタイミングまで同じ。異変がないことが、いちばんの異変である。
どうしても、同じ景色に戻ってきてしまう。
5年連続のCS。ペナントには届かないAクラス。
「もうすぐ優勝できるのではないか」。
そう思ってから一体、何周しているのだろうか。
優勝できる戦力はあるはずなのに。期待しては、あるいは今年の前半戦のように絶望したとしても、毎年10月になると、勝率五割あたりのこの場所に戻って来てしまう。
我々は迷い込んでしまったのではないか。このループする異空間に。
出口はたったひとつ。ペナントレースを制覇した、あの98年。”98番出口”のみだ。
というわけで、今シーズンで28度目となるループが終わってしまったこのオフに、
ただひとつの出口、98番出口へ至るための、異変はどこにあったのか。検証してみたい。
ひとつ間違えて08番出口から出てしまうと、5年連続最下位になってしまう最悪のループが待っているので気を付けなければならないのだが。
振り返って考える 2026年の異変点
この2026年、大きな異変はふたつある。
1番牧の開幕戦初球ホームラン、入江の初回60球、ヤクルト戦0勝7敗&広島戦6勝0敗1分のシンメトリー。三森の神走塁大逆転勝ち、満塁ホームランを打たれたら不敗の神話。9回のストッパー柴田登板? 演歌な汐恩グッズ? 鈴木尚典コーチの昇格、まさかの井上温大攻略などなど……どれも思い当たる異変ではあるのだが。
ひとつはやはり5月12日だろう。山本祐大がトレードに出された忌まわしきあの日。
ここまでほぼ5割で来ていたベイスターズは、まさかのシーズン中に正捕手を出すという前代未聞のニュースにより、チームの内外に動揺が広がった。